2008/11/16

SW2.0: 操霊術師の日記

*mixi のゲームサークルコミュニティ (クローズド) に投稿してあった記事の転載。*

キャラクターは以下↓

パーヴェル: タビットのコンジャラー/ソーサラー。ソーサラースキルのほうが役に立つけど、本兎はあくまでも操霊術師だといいはる。悲観的。
パディントン: タビッ子のマギテック。いろいろ理屈をこねるけどたぶん天然ボケ。
ディエゴ: タビットの格闘家。すごく前向きだけどたぶん天然ボケ。
チェリ: タビッ娘のフェアリーテイマー。回復系呪文や支援系呪文がとっても役にたつ、PC の命綱な NPC。でもたぶん天然ボケ。

鍋を取り戻してからだいたい一週間。隣村から蛮族退治の依頼が来た。パディントンの奴が先日の一件を大袈裟に吹聴して回ってくれたお蔭なのだが、黙らせる術を俺は持たない。

パディントンとチェリは冒険者として仕事が回ってきたことが嬉しいらしく、早速でかけようと意気込んでいる。こいつらに付き合っていたら命がいくらあっても足りない気がする。正式に依頼を受領したわけではないので、話を聞くだけ聞いて、手に負えない内容なら断って戻ってこようと考える。

隣村の村長によると、話はさほど大きなことではないらしい。近くの枯れかけた銀鉱山に蛮族が棲みつき、老細工師が仕事にならずひどく落ち込んでいるのだという。「冒険者に依頼」といった正式な話ではないし、その蛮族が村を襲ってくるといった訳でもない。様子を見にいく程度ならどうにかなるだろう。

ディエゴとやらいう腕っ節自慢のタビットを訪れる。俺たちは三人とも殴りあいには不向きなので、肉体派が手伝ってくれれば心強いと考えてのことだ。ディエゴは冒険者になりたいと漠然と考えていたそうで、説得する手間もなく、同行を快諾した。

冒険者志願ばかりが集まってくるのは何故なのだ。

老銀細工師に詳しい話を聞きに行く。彼は終始投げ遣りな態度を崩さず、蛮族の棲み付いた銀鉱など放って置けと言い張る。これは重症のようだ。鉱山はともかく、この老人を放って置くのはさすがに良心が疼く。やむなく、我々が蛮族退治をしたいのだと思わせ、なんとか鉱山までの道のり、鉱山内部の簡単な地図、棲み付いた蛮族の様子を聞き出すことができた。

鉱山へ向けて出発する。三、四時間ほどの道のり。途中、レッドキャップ一体及び狼五頭と接触し、これを退ける。レッドキャップとの戦闘の際、ディエゴの拳の威力を知ることができた。ディエゴは両親が名の知れた躁霊術師であり、本人も魔力を殴り合いに活かす術を身に付けている。確かな戦力になってくれそうだ。

鉱山内部へ進入。おおまかな地図を頼りに、慎重に進む。途中の小部屋で老銀細工師の物と思われる工具類を発見。さらに進むとT字路に出た。左はすでに掘りつくされた行き止まり、右の奥が蛮族の住処となっているという話だ。パディントンが両側に気配を感じるというので、まずは行き止まりの方から対処することにする。

左の先には二体のゴブリンがいた。我々四人を見ると即座に武器を捨て、降伏した。魔力を使わずに済んで助かった。人数が増えるとこういうメリットもある。二体をロープで縛り上げてから、T字路まで戻り、さらにその奥へと進む。

蛮族が寝床にしていると思しき小部屋を抜け、さらに奥を目指す。我々はたいまつの灯りを頼りに進んでいるので、この先ではおそらく蛮族どもが迎撃の準備をしていることだろう。まずは防御の魔法を使ってから、最奥の部屋へと突入する。

予想通り、蛮族が襲い掛かってきた。落ち着いて迎え撃つものの、今一歩反応が遅れ、敵に先手を取られてしまう。二体のゴブリンがパディントンに、一体のボガードがディエゴに、そして二体のゴブリンが俺に向かってきた。

ボガードは厄介な相手だ。ディエゴは二度の攻撃を受け、あっという間に血まみれとなる。なんとか生きていてくれたのは有難い。パディントンと俺も手傷を負うが、まずは蛮族の攻撃を持ちこたえた。チェリにディエゴを癒してもらい、ディエゴにはボガードの体勢を崩すよう指示する。ボガードの攻撃を防ぎつつ、先にこれを倒さねばならない。

厳しい戦いだ。ディエゴはボガードを投げ損ない、パデイントンの弾丸も的を逸れる。俺のエネルギー・ボルトが命中、一矢を報いるが、まだまだこちらが圧倒的に不利だ。

なんとかボガードを沈めようと試みるものの、思うに任せない。奮闘も空しく、ディエゴが倒れた。ゴブリンが一体チェリに向かっているが、構っている余裕もない。どうにかボガードに止めを刺した時には、パディントンも俺もゴブリンの攻撃を受けて血に染まっていた。チェリが無傷で居てくれているのが唯一の幸いだ。

難敵を倒すことができたとは言え、まだ四体のゴブリンが残っている。チェリに向かった一体は彼女の魔法で瀕死の状態となっているが、まだまだ気を抜くことはできない。我々に残された魔力は残り少ない。これを気取られることなくゴブリンの数を減らすことに専念しなくては。こちらが優勢だと相手に思わせ、降伏してくれれば占めたものだ。

魔力も枯渇し、ついには已む無く杖で殴る破目にまで追い込まれた。ゴブリン二体を倒したところで、思惑通り残り二体が武器を捨てた。辛うじての勝利。命が縮まるとはこういうことを言うのだろう。パディントンにロープを渡してゴブリンを縛らせ、その間に俺はディエゴに応急手当を試みる。有難いことに、ディエゴはすぐに息を吹き返した。

薬草を使い、全員の怪我を一通り手当てしてから、蛮族の死体を物色し、部屋を捜索。総計 1,000 ガメルにはなりそうかという程度の品物を発見、持ち帰ることにする。先程行き止まりに放置しておいたゴブリンは、縛られたまま這いずって逃げ出したようだった。泥のように疲れきっていた我々は、ディエゴを見張りに立て、とりあえず一眠りすることにした。

多少元気を取り戻したものの、時刻はもう夜中に近い。今日はここで夜を明かすことに決める。昼食の残りを分け合って腹を満たし、チェリを除く三人で交代に見張りに立ちながら、朝を待った。

朝。まずはゴブリン二体をどうするか決めなければならない。少々迷ったが、やはり殺すことにする。パディントンにサーベルを借り、ディエゴと二人で止めを刺しに行った。

戻ってみると、チェリがパディントンを指図して、小部屋の掃除を始めている。老銀細工師が戻ってきて仕事を再開できるように、蛮族の痕跡を消しておいた方がいいだろうと言う。もっともな話だ。さすが女は細かいところに気が回る。蛮族の死体や汚らしい寝床、ガラクタ類を運び出して燃やし、昼前には坑道の片付けも終了。村へと引き上げを開始した。

帰り道は特に何事もなく、道に迷うこともなく村へと戻ることができた。村長はえらく喜び、礼金を支払ってくれた上に戦利品の買取りまで申し出てくれた。老銀細工師に鉱山の蛮族が一掃されたことを伝えるのも村長に頼む。

ディエゴの両親が残していったという荷物を村長が持ち出してきた。中には、冒険の仲間と分けるようにという手紙と共に 2,000 ガメルが入っていた。高位の操霊術師である彼らはディエゴを残して冒険の旅に出ているのだが、息子のこともそれなりに気にかけていたということらしい。感動の涙を流すディエゴ。中睦まじい夫婦、素直な息子。……まぁ俺には縁のない話だ。

俺はちょっと思うところがあったものの、とりあえず依頼達成を報告するため、元の村に戻ることにした。ディエゴも一緒に来るという。

冒険者の店に着くと、俺は両耳を掴まれて店の奥へと引きずりこまれ、お前は事情を察してると思っていた、と繰言を聞かされた。この店主は冒険者の店を営んでいるというのに、目立つようなことはしたくない素振りだ。俺も確かに察してはいた。隣村からそのまま他所へ旅立とうかとも考えないではなかったのだ。しかしパディントンはまだ成人前だし、チェリを無断のまま連れ出すという訳にもいくまい。がっくりと肩を落とす店主に、ボガードが持っていた剣のかけらを引き取らせる。俺とて名声を求めているのではないし、静かに操霊術の研究ができれればそれに越したことはないと思っている。気落ちしているのはお互い様だ。

パディントンはまた我々の「大冒険」について、大袈裟に「武勇伝」を広めて回ることだろう。恐らくディエゴも。考えるだに頭痛がしてくるが、彼らを黙らせる術を俺は持たない

そろそろこの村を出ることを本気で考えた方が良さそうだ。

筆: まゆげ

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